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自衛隊の国際平和協力活動を評価する人は9割近く

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ハイチ地震での陸自部隊の支援活動も国際平和協力活動の一つ。(写真:ロイター/アフロ)

・自衛隊の国際平和協力活動を評価する人は2018年時点では9割近く。
・自衛隊の国際平和協力活動の今後の取り組み姿勢について、現状維持を望む人は6割強。これまで以上に積極的な展開を望む人は2割台で少しずつ回答率は減っている。
・自衛隊の国際平和協力活動の今後の取り組み姿勢の積極的な展開を望む人は若年層と男性に多い。

自衛隊による活動の一つに、海外における国際平和協力活動がある。国際平和の維持を主目的とし、他国との関係無くしては状態の維持すら難しいほどに密接な関係を有するようになった国際社会においては、これもまた日本そのものの平和と繁栄に貢献する活動に違いない。一方でその行為については賛否両論がなされているのも事実。今回は内閣府が2018年3月に発表した自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査(※)の結果報告書から、自衛隊の海外での活動に対する評価について確認する。

自衛隊における海外の活動、国際平和協力活動とは【国際平和協力本部事務局】の区分によると、「国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations、国連PKO)」の他に「人道的な国際救援活動」「国際的な選挙監視活動」などが該当する。

↑ 国際平和協力業務の仕組み。国際平和協力本部事務局・公式ページより抜粋
↑ 国際平和協力業務の仕組み。国際平和協力本部事務局・公式ページより抜粋

これらの活動に対し、どの程度の評価をしているのかについて、肯定的評価「大いに評価」「ある程度評価」と否定的評価「あまり評価せず」「全く評価せず」合わせて4段階、加えて「分からない」の選択肢から選んでもらったところ、「大いに評価」「ある程度評価」の肯定的評価派は87.3%に達した。逆に否定的評価派は7.3%に留まる結果となった。

↑ 自衛隊の海外での活動に対する評価(2018年)
↑ 自衛隊の海外での活動に対する評価(2018年)

女性や高齢層・若年層で「分からない」の回答率が高いのは、今調査における各調査項目で似たような傾向を示している状況同様に、「判断に至るだけの情報・知識を習得していない」ことによる選択の可能性が高い。啓蒙不足による結果とも解釈できる。あるいはその属性では、元々興味が無い人が多いのも要因かもしれない(関心が無ければ詳しく知ることも無く、結果として判断もつきかねる)。

興味深いのは「大いに評価」の値。40代がもっとも多く、それ以降は年齢とともに漸減する傾向にある。「ある程度評価」の値は年齢階層による大きな変化は見受けられないことから、単純に年上になるに連れて、国際平和協力業務などの自衛隊による海外での活動を「強く」肯定できる人が減っていることを意味する。自衛隊の海外活動に関しては単純に評価する・しないでは割り切れない、さまざまな想い(例えば、どのような理由、行動内容にせよ、海外で日本の自衛隊が活動することをどのように受け止めるのか)が錯綜しているものと考えられる。

もっともこれらの違いは、多くて10%ポイント内外の違いでしか無く、総論としては「賛成派は圧倒的多数」であることに違いは無い。

一方で国際平和協力活動の内容・規模については現状維持派が多数であり、より積極的な参加とまでは考えていないようだ。しかも次第に現状維持派はますます増えつつある。

↑ 国際平和協力活動への取り組み
↑ 国際平和協力活動への取り組み

今調査項目は2012年以降のもので、現時点で3回分しかデータが無い。その限りでは確実に現状維持派が増え、積極派が減少、縮小・否定派はほぼ同率の動きを示している。

ただし、例えば直近分の属性別動向を見ると、若年層では積極派が多く、年上になるに連れて縮小・否定派と「分からない」が増えているのが実情。18~29歳では積極派は3割を超えている。

↑ 国際平和協力活動への取り組み(2018年)
↑ 国際平和協力活動への取り組み(2018年)

全体としての現状維持派の増加は、年齢階層による思惑の違いも多少は影響しているのだろう。

他方、今調査の他項目では自衛隊への期待に関し、日本国内、あるいは周辺環境での責務への期待が寄せられていることが明らかにされている。国際平和協力活動の意義や必要性には肯定的であっても、「まずは日本国内の事案対応をより充実すべき」との考えが強まっているのかもしれない。

■関連記事:

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※自衛隊・防衛問題に関する定期世論調査

2018年1月11日から21日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた18歳以上の日本国内に在住する日本国籍を持つ人に対し、調査員による個別面接聴取法で行われたもので、標本数は3000人、有効回答数は1671人。有効回答者の男女構成比は781対890。年齢階層別構成比は18~29歳が133人、30代が175人、40代が271人、50代が265人、60代が361人、70歳以上が466人。

過去の調査もほぼ同様の条件で行われているが、今回調査の2018年は年齢の下限が18歳、前回調査の2015年までは20歳となっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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